4.日常生活で注意すべきことは?

活動性を高めるための工夫

(3)補助的ツールについて

   血友病性関節症では、関節可動域の制限や筋力の低下によって、日常の活動性にさまざまな障害が生じます。例えば、膝や足首の動きの制限によって足の長さなどが短くなって歩き方が不自然になったり、筋力の低下によって関節内出血が起こりやすくなったりします。そのために、これらを補ったり、関節を守るために装具やサポーターなどを使用したり、靴の高さを変えるなどの工夫を行うことが必要となります。

 

1.装具やサポーター

   これは主に関節を保護し、出血を予防するために使用します。特に歩行時に強い力がかかる足首や膝の関節に対しては伸縮性の素材で作られたサポーター(関節の動きを僅かに制限することで痛みを和らげ出血などを予防する。(図7)などが主に用いられますが、関節が不安定な場合には短下肢装具(プラスチック製の軽いしなりのあるもので、足首を固定することで出血の予防、痛みの軽減や関節の安静などを図る。(図8)を用いることもあります。これらの使用に関しては、関節症の程度や症状などによって適応が異なりますので、必ず主治医やリハビリテーション科医に相談して下さい。

 

図7 足首の関節のサポーター 柔らかいもの(上)とやや固いもの(下)

図8 足首の関節のサポーター 柔らかいもの
図8 足首の関節のサポーター 柔らかいもの

図8 プラスチック製短下肢装具(オルソレン®

 

図7 プラスチック製短下肢装具 エンゲン型装具

2.靴の工夫

 

   歩く時の衝撃は痛みの原因となり、関節症にも有害と考えられています。靴の中敷を衝撃吸収素材(ソルボセイン、シリコン)のものに換えると歩くのが楽になります(図9)。関節の制限により足の長さが短くなって歩く時にかかとがつかない、あるいは身体が左右に大きく振れて歩きづらいなどの歩行障害がある場合は履いている靴の高さを調節することで随分と歩きやすくなり、歩行の不自然さも改善される場合が少なくありません。足の長さの調整は、靴に中敷を入れて調節したり、かかとの部分を高くして(補高)行います(図10)。この調整は何度も歩きながら行っていくことが必要です。また、かかと部にエアーの入った衝撃を吸収するタイプの靴(図11)や、特に小さなお子様の場合、日常生活での活動性を維持しながらも足関節を保護する目的で、足関節を覆う形状のハイカットシューズ(図12)を用いることがあります。これらについても装具と同様に主治医、リハビリテーション科医に相談して下さい。

 

図9 衝撃吸収素材を用いた中敷

ソルボセイン製の中敷(左)、シリコン製の中敷(右上)、かかと用の中敷(右下)

ソルボセイン製の中敷
シリコン製の中敷
かかと用の中敷

図10 靴の工夫  補高(※)、ソルボセイン製の中敷(←)

図7 プラスチック製短下肢装具 エンゲン型装具

図11 かかと部にエアーの入ったウォーキングシューズ(市販品)

補高

図12 ハイカットシューズ(市販品)

ハイカットシューズ(市販品)
ハイカットシューズ(市販品)