膝関節の運動(下肢の運動)
(2)筋力アップのための運動(筋力強化訓練)
関節周囲の筋力アップを図ることは血友病性関節症の悪循環を断ち切るための最も有効で重要な手段の一つです。出血後の間もない時期には運動時に痛みを伴うことがありますので、決して無理をせずに痛みのない範囲で運動を行うようにします。また、関節を動かさず筋肉だけを収縮させる運動(マッスルセッティング)を行います。さらに運動時の痛みがなくなれば、家庭にある色々な器具を使った運動を加えてもよいでしょう。なお、運動の種類、回数、時間などは患者さんの症状により違います。筋力アップの運動は主治医やリハビリテーション科医に相談をしてから始めるようにしましょう。筋力アップの運動で、運動時や運動後に痛みがあったり残ったりしている場合には、運動が過度になっていますので、主治医やリハビリテーション科医に相談しましょう。
1 下肢の運動
● 膝関節の運動
膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)は特に弱くなる傾向があります。ここでは主に膝を伸ばす筋力をアップする方法を紹介しましょう。
膝のマッスルセッティング(出血後の間もない時期の運動)
- バスタオルなどを丸めて膝の下に入れます。
- 膝を伸ばさないで、最大に大腿四頭筋を収縮させます。
- この時バスタオルを押しつぶすようにしながら、また足首を反らすようにしてゆっくりと、大腿四頭筋に力を入れていきます。膝の筋肉が最大に収縮していることを確かめて下さい(下図の「a」の矢印の向き)。
ポイント
- 運動の目安としては5-5-5(最大に力を入れて5秒間、5回繰り返す、週5日)
- 大腿四頭筋を収縮させる時、同時に足首も反らせるとより効果的です(上図の「b」の矢印の向き)。
- 血友病性関節症の筋力強化として最も重要な方法です。
ゴムバンドや重りを使った運動(椅子に腰掛けて)
運動による痛みがなくなれば、少しずつ抵抗を加えた運動に切り替えていきます。
- 自転車のチューブなどの伸縮性のあるゴムバンドや重りなどを用意します。
- 椅子の脚にゴムバンドを固定し、腰掛けた状態で図のようにゴムバンドを足で前に引き上げるように引っ張ります。
重りの場合は、同じく腰掛けた状態で図のように足を前に引き上げるように膝を伸ばします。 - 左右の足を替えて行ってみましょう。
ポイント
- ゴムバンドの強さや、重りは関節への負担の少ないものを使いましょう。
- この運動を始める時は、必ず主治医やリハビリテーション科医に相談しましょう。
椅子からの立ち座り運動
椅子からの立ち座りも、膝を伸ばす筋力アップには効果的な方法です。
ポイント
- 椅子の高さが膝の負担に影響しますので、やや高めの椅子を利用すると、負担が少なくなります。
- 椅子に深く腰掛けると立ち上がりが難しいので、やや浅めに腰掛けるとよいでしょう。
- 動作はゆっくり立ち上がり、ゆっくり座るとよいでしょう。